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『ごんぎつね』ごんはなぜ、いたずらをしたのか──「悪い子」で終わらせない読み方

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「ごんって、いたずらっ子こだったんだよね」

そう覚おぼえている方ほうが多おおいかもしれません。けれど本文ほんぶんを読よみ返かえすと、ごんのしたことは「いたずら」という言葉ことばから想像そうぞうするより、ずっと重おもいことに気きづきます。

この記事きじでは、ごんがなぜそんなことをしたのかを追おいながら、「ごんは悪わるい子こか、いい子こか」で止とまらない読よみ方かたを探さがしてみます。


ごんのしたことを、並ならべてみる

本文ほんぶんに書かかれているのは、こういうことです。

  • 畑はたけへ入はいっていもを掘ほりちらす
  • 菜種なたねがらの干ほしてあるところへ火ひをつける
  • 百姓ひゃくしょう家かの裏うらに干ほしてあるとんがらしをむしり取とる
  • 兵十ひょうじゅうのとったうなぎを盗ぬすむ

いかがでしょうか。

火ひをつける、というのは、木きと紙かみでできた家いえが並ならぶ村むらでは命いのちにかかわることです。食たべものを奪うばうのも、毎日まいにちを暮くらすのがやっとの人ひとたちにとっては、深刻しんこくな打撃だげきでした。

村人むらびとにとってのごんは、「かわいいいたずらっ子こ」ではありません。 本当ほんとうに困こまる相手あいてだったのです。

ここを押おさえておくと、あとの場面ばめんの重おもみが変かわってきます。


それでも、ごんは悪わるいきつねなのか

では、ごんは悪意あくいをもってやっていたのでしょうか。

そうは読よめません。ごんには、自分じぶんのしていることの意味いみが分わかっていなかったからです。

火ひをつければ村むらが焼やけるかもしれない。食たべものを奪うばえば誰だれかが飢うえるかもしれない。ごんは、そこまで想像そうぞうしていません。

では、なぜやったのか

ここで、ごんが置おかれた状況じょうきょうを思おもい出だしてください。

ひとりぼっちの小しょうぎつねで、しだのいっぱいしげった森もりの中なかに、あなをほってすんでいました。

ひとりぼっち、と書かかれています。

きつねは、秋あきになると子こどもが親おやから離はなれて、一いち匹ひきで生いきていきます。ごんもそうやって、たったひとりで森もりに暮くらしていました。

さみしくて、人ひとの世界せかいに近ちかづきたい。誰だれかとかかわりたい。けれど、どうすればいいのか分わからない。

だから、いたずらという形かたちでしか関かかわれなかった——そう読よむと、ごんの行動こうどうがつながって見みえてきます。

ごんにとっては「かまってほしい」の合図あいず。村人むらびとにとっては「迷惑めいわく」で「おそろしいこと」。 同おなじ行為こういが、両側りょうがわでまったく違ちがう意味いみを持もっていました。


うなぎの日ひに、何なにが変かわったか

物語ものがたりが動うごくのは、兵十ひょうじゅうの母親ははおやが亡なくなった場面ばめんです。

ごんは考かんがえます。「兵十ひょうじゅうのおっかあは、うなぎが食たべたいと言いいながら死しんだんじゃないだろうか」。そして、自分じぶんが盗ぬすんだうなぎのせいだと思おもい至いたります。

このとき初はじめて、ごんは自分じぶんの行おこないをふり返かえります。

ここが大事だいじなところです。ごんは誰だれかに叱しかられたわけでも、罰ばちを受うけたわけでもありません。自分じぶんで気きづいたのです。

そして翌日よくじつから、栗くりや松まつたけを届とどけ始はじめます。物語ものがたりでは、これを「つぐない」と呼よんでいます。

栗くりは、簡単かんたんに手てに入はいるものではない

ごんは、山やまで栗くりをどっさりひろって、それをかかえて、兵十ひょうじゅうの家いえへ行いきました。

さらりと書かかれていますが、山やままで行いかなければ手てに入はいらないものです。それを毎日まいにち、こっそり置おいていく。

見返みかえりを求もとめていません。名乗なのってもいません。ただ、届とどけ続つづけます。


ごんは「心こころが育そだっていく」きつね

ここまで見みてくると、ごんは二ふたつの型かたのどちらにも収おさまらないことが分わかります。

よくある読よみ方かた 本文ほんぶんから見みると
ごんは悪わるいきつね ✕ 悪意あくいがない。意味いみを知しらなかった
ごんはかわいそうなきつね △ 同情どうじょうだけでは、つぐないの重おもみが消きえる
ごんは心こころが育そだっていくきつね ⭕️ 自分じぶんの行おこないを通とおして、人ひとの気持きもちを知しっていく

新美南吉にいみなんきちが描えがいたのは、その途中とちゅうにいるごんです。

まだ完成かんせいしていない。相手あいてのことも本当ほんとうには分わかっていない。それでも、確たしかに何なにかを学まなびつつある。だからごんは、こんなに人間にんげんくさいのだと思おもいます。


考かんがえてみたい問とい

問といかけ ねらい
「ごんのいたずらって、どのくらい悪わるいことだと思おもう?」 「いたずら」の重おもさに気きづく
「もし村むらの人ひとだったら、ごんをどう思おもったかな」 視点してんを移うつしてみる
「ごんはどうして、ひとりでいたずらばかりしてたんだろう」 さみしさに目めを向むける
「栗くりをこっそり置おいていったのは、なんでだと思おもう?」 名乗なのらない理由りゆうを考かんがえる
「ごんは、悪わるい子こ?いい子こ?」 どちらとも言いえないと気きづく

最後さいごの問といは、「どちらとも言いえない」という答こたえにたどりつけたら大だい成功せいこうです。すぐに決きめられないことがある、と知しるのは、物語ものがたりを読よむ大おおきな意味いみのひとつだと思おもいます。

聞きくときのコツ

子こどもが「悪わるい子こ」と答こたえても、「いい子こ」と答こたえても、すぐに評価ひょうかしないでください。

かわりに 「どうしてそう思おもったの?」 と返かえしてみてください。理由りゆうを話はなしているうちに、自分じぶんで「でも……」と言いい出だすことがあります。その「でも」が生うまれる瞬間しゅんかんが、いちばん豊ゆたかな時間じかんです。


おわりに

ごんのいたずらは、軽かるいものではありませんでした。それでもごんは、自分じぶんで気きづき、自分じぶんで行動こうどうを変かえていきます。

叱しかられたからではなく、自分じぶんで気きづいた。 ここに、この物語ものがたりのやさしさがあるように思おもいます。

お子こさんがごんをどう見みるか、ぜひ聞きいてみてください。大人おとなが思おもいつかない答こたえが返かえってくるかもしれません。


この記事きじは、YouTube「おわか文庫ぶんこ」の考察こうさつ動画どうがをもとに書かいています。ミアとハルンの会話かいわで聞ききたい方ほうは、動画どうがのほうもどうぞ。

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