『雪の女王』なぜディズニーはエルサに変えたのか──カイの目と、アナの胸
▶ YouTubeで見る雪の女王 |どうして雪の女王をエルサにしたの?【読書感想文におすすめ‼︎】原作の『雪の女王』には、エルサは出てきません。
では、ディズニーはなぜ「雪の女王」を、エルサという一人の女の子に作り変えたのでしょうか。
比べていくと、変えた部分にこそ意味があることが見えてきます。
原作の雪の女王は、「人」ではなく「象徴」

まず、原作の雪の女王がどんな存在だったかを確認します。
美しく、強い力を持ち、カイを連れ去っていく。けれど——その心の中は、ほとんど描かれません。
なぜカイを連れていったのか。何を思っていたのか。物語は説明しないままです。
つまり原作の雪の女王は、悩みや事情を持った登場人物というより、「冷たさ」そのものを表す象徴に近い存在です。
そして原作で本当にこわいのは、雪の女王よりも、カイの心に入った鏡のかけらのほうでした。
カイの「目」に刺さり、アナの「胸」に刺さる

ここで、とても面白い対比があります。
| 原作『雪の女王』 | 映画『アナと雪の女王』 | |
|---|---|---|
| 刺さるもの | 悪魔の鏡のかけら | 氷 |
| 刺さる場所 | カイの目と心 | アナの胸 |
| 起きること | 世界の見え方が冷たくなる | 命が凍っていく |
カイは「目」に刺さります。 だから、世界の見え方そのものが変わってしまう。花を見ても美しいと思えず、人のやさしさをばかにするようになります。
アナは「胸」に刺さります。 こちらは、命そのものが凍りついていく危機です。
同じ「刺さる」でも、変わるものがまったくちがうのです。
そして、決定的なちがい

さらに大事なちがいがあります。
カイは、冷たい人になってしまいます。 人を傷つけるような態度をとるようになる。
けれどアナは、冷たい人にはなりません。 胸に氷を受け、体が凍っていってもなお、最後までエルサを思い続けます。
つまり映画では、「凍ること」と「心が冷たくなること」が切り離されているのです。
体は凍っても、心はあたたかいまま。だからアナは、自分が助かることよりも、エルサを守ることを選びます。そこに、原作とはちがう愛の形が置かれています。
外からの脅威から、内側の苦しみへ

そのうえで、エルサという人物を見てみます。
エルサは、生まれつき氷の力を持っています。けれどその力で、大切な人を傷つけてしまうかもしれない。だから、自分の力をこわがっています。
人を傷つけたいわけではありません。傷つけたくないからこそ、扉を閉じて自分を隠すのです。
ここが、原作との決定的なちがいです。
- 原作の雪の女王 → 外からやってくる冷たい存在
- エルサ → 自分の中にある力に苦しんでいる人
外の敵だったものが、心の内側の不安や孤独に置きかえられているのです。
なぜ、そう変えたのか

理由は、いまの物語の作られ方にあると思います。
「悪い人を倒して終わり」ではなく、「その人がなぜそうなったのか」を描く。 それが、現代の物語で大切にされていることです。
エルサには理由があります。本当は人とつながりたい。けれど自分の力がこわくて近づけない。その苦しさが、氷の力として表れています。
氷は、悪い魔法ではありません。不安や孤独の形なのです。
だから観る人は、エルサを倒すべき敵とは思いません。分かる、と感じてしまう。 ここが、この作り変えの中心です。
王子様の愛から、姉妹の愛へ

そして最後に、もう一つ。
- 原作 → ゲルダの愛が、カイを救う
- 映画 → アナの愛が、エルサを救う
しかも映画では、それが王子様との恋愛ではなく、姉妹の愛として描かれます。
アンデルセンが書いた「凍った心を愛がとかす」というテーマは、そのまま残っています。残したうえで、誰と誰の愛なのかを描き直したのです。
変えた部分に、作り手の考えが出る

こうして並べると、見えてくることがあります。
どちらが正しいか、ではありません。 大事なのは、「何を変えたのか」「なぜ変えたのか」です。
そこに、作り手が何を伝えたかったのかが表れます。
原作を知ってから映画を見直すと、エルサやアナの姿が、少しちがって見えてくるはずです。
考えてみたい問い
| 問い | ねらい |
|---|---|
| カイは目に、アナは胸に刺さるね。どうしてちがうんだろう | 対比に気づく |
| エルサは、悪い人だと思う? | 単純な善悪で見ない |
| どうしてエルサは、扉を閉めてしまったのかな | 行動の理由を考える |
| もし原作のまま映画にしたら、どんな話になるかな | 作り変えの意味を考える |
この記事は、YouTube「おわか文庫」の考察動画をもとに書いています。あわせて「原作にはエルサもアナも出てこない」、「凍った心って、どんな心?」もどうぞ。
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