『注文の多い料理店』だれが注文していたのか──題名の意味がひっくり返るとき
▶ YouTubeで見る【3分で分かる】注文の多い料理店『注文の多い料理店』という題名を読むと、多くの人は「お客さんから注文される料理店」を思い浮かべるかもしれません。
ところが、山猫軒で注文を出しているのは、お客さんではありません。店のほうが、二人の紳士に次々と命令を出しているのです。題名の意味がひっくり返るところに、この物語のおもしろさとこわさがあります。
困っていた二人の前に現れた店

二人の紳士は、山奥で道に迷い、おなかをすかせています。連れていた犬も倒れ、どうしてよいか分からなくなったとき、山の中に立派な西洋料理店を見つけます。
看板には「山猫軒」と書かれています。山の中に突然ある西洋料理店は、それだけでも少し不思議です。
けれど二人は、困っていたために、店の不自然さよりも「食事にありつけるかもしれない」といううれしさを先に感じます。
「どなたもどうかお入りください」

最初の戸には、「どなたもどうかお入りください」と書かれています。二人は、だれでも歓迎してくれる親切な店だと受け取ります。
その次には、「ことに肥ったお方や若いお方は大歓迎いたします」とあります。二人は、自分たちが歓迎されていると思って喜びます。
しかし「肥った人」「若い人」を、料理の材料として見ている言葉だと考えると、意味が変わります。親切そうな言葉が、急にこわい言葉に見えてくるのです。
二人は、言葉を自分に都合よく読む

二人は、扉に書かれた言葉を、いつも自分にとって都合のよい意味で受け取ります。
髪を整えることや、靴の泥を落とすことも、立派な店の作法だと思います。鉄砲や弾丸を置くことも、食事をするためのきまりだと考えます。
けれど、山猫軒の側から考えれば、二人をきれいにし、逃げたり戦ったりできないようにしている、とも読めます。二人は読み違えているのに、そのことに気づきません。
注文が、料理の下ごしらえに変わる

帽子や外套、靴を脱ぐこと。体にクリームを塗ること。香水のようなものをふりかけること。扉を進むほど、注文は不自然になっていきます。
そして最後に、体に塩をもみ込むように言われます。ここで二人は、ようやく自分たちが料理される側だったと気づきます。
最初は店に食べに入ったはずの二人が、いつの間にか食べられるための準備をしていたのです。
「注文の多い料理店」とは、どんな店か

この題名の「注文」は、お客さんが料理を頼む注文ではありません。山猫軒が、お客さんに出す命令のことです。
店は力づくで二人を捕まえません。丁寧な言葉と、もっともらしい説明で、二人を奥へ奥へ進ませます。
だからこそ、山猫軒はただ怪しい店なのではなく、言葉を使って人を動かす店としてこわく見えます。
考えてみたい問い
| 問い | 考える手がかり |
|---|---|
| 二人は、どの扉の言葉で気づけたかもしれない? | 扉の言葉を順番に読み返す |
| 二人はなぜ、最後まで自分に都合よく読んでしまったのだろう? | 二人が置かれていた困った状況を考える |
| 「注文の多い料理店」という題名は、読み終わったあと、どのように見える? | 最初に思った意味と比べる |
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